一括償却資産は10万円未満のものでも適用できる?

やや難しめの税金・会計話

 

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

税理士事務所の方向けとして、以前抱いた疑問に「一括償却資産は10万円未満のものでも適用できるのか」というものがあったので、自分なりに考えたところをまとめてみました。

 

私の結論は「できる」なのですが、この点について、自分なりの考え方を書いてみます。

 

「一括償却資産って10万円未満でも計上できるの?」と不安に思う

 

前提条件と自分なりの解決案

以前、ある会社さんで、こんな状況になっていました。

・10万円未満のものをたくさん買い、総額300万円ほどあった

・300万円をすべて損金経理すると、ぎりぎり赤字に転落する状況

・償却資産税を納付している会社さんなので、固定資産に計上すると償却資産税がかかる

・繰越欠損金あり

 

 

自分なりに考えた解決策

消耗品費などにすると、赤字に転落する

じゃあ固定資産に計上するか

でも償却資産税払ってるから、余計な税金払わせるのもな・・・

一括償却資産に計上すればいいんじゃない?

 

 

検索してみたら「一括償却資産は10万円以上20万円未満」?

と思いついたまではよかったのですが、私は小心者なので「まさか10万円未満だと一括償却資産にできないなんて規定はないよな」という疑問が頭をよぎりました。

 

なので、念のためインターネットで検索してみることに。

 

するとある税理士さんのブログで「一括償却資産は10万円以上20万円未満」という記述があり、「え、10万円未満だとダメなの?」と思ったのでした。

 

 

 

一括償却資産に対する、条文をもとにした自分の考え

検索ではわからなかったため、条文にあたったほうが早いと思い、読んでみました。

 

根拠条文

先に条文を引用します。

 

(一括償却資産の損金算入)

第百三十三条の二  内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用を受けるものを除く。)を事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したもの(以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額(以下この項及び第十二項において「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(次項において「損金算入限度額」という。)に達するまでの金額とする。

法人税法施行令(e-Gov)

(注)当記事は小規模企業を対象にしているため、組織再編系の括弧書きはごりごり削ってます。

 

 

要件の整理

この規定を踏まえてみると、一括償却資産として計上するには以下の2つの■を満たせばよい。

 

■取得価額が20万円未満であること

■次のどの資産でもないこと

・第四十八条第一項第六号 → 国外リース資産

・四十八条の二第一項第六号 → リース資産

・前条(第百三十三条) → 10万円未満または使用可能期間1年未満の資産で全額損金経理するもの

 

 

一括償却資産に対する結論

・10万円未満のものであっても、全額損金経理をするかはその法人の任意

・10万円未満のものを全額損金経理していないのであれば、一括償却資産の要件を満たすため計上してOK

という結論に至り、10万円未満の資産をすべて一括償却資産として計上して3年償却を行うことになりました。

 

 

 

おまけ 一括償却資産の基礎知識や注意事項

というのが結論に至るまでの経緯なのですが、おまけとして一括償却資産の基礎知識や注意事項も少し。

 

一括償却資産の概要ざっくり

・一括償却資産は基本「3年間で費用にする」と考えておけばOK(3分の1ずつを、3年間かけて)。

・いつ買おうとも(期の途中でも期末間際でも)その期に使い始めていて、その期が一年あるのであれば、とにかく取得価額の3分の1で償却してOK

・一括償却資産として計上した資産は、償却が終わる前に売っても捨ててもとにかく3年間で償却していく(売却、除却、廃棄という概念がない)

・一括償却資産として償却する金額があった場合、別表十六(八)をつけないとだめ

・一括償却資産として計上すると、償却資産税の対象からはずれる

・一括償却資産の取得価額は、税抜経理をしているのであれば税抜で、税込経理をしているのであれば税込で考える(税込21万円のものを買った場合、税抜経理なら一括償却資産にできるが、税込経理なら一括償却資産にできない)

・ソフトウェアなどの無形固定資産も一括償却資産として計上できる(ソフトウェアは償却資産税の問題が生じないので、ほかに問題がなければ少額減価償却資産の特例でいいんじゃないかとも思いますが)

・30万円未満のものを全額損金にできる「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」とは違い、年間300万円までといった上限はない

・租税特別措置法の規定ではないので、適用額明細書への記載は不要

 

 

 

おわりに

かなり限定的な状況だったとは思いますが、このときは落としどころがそこぐらいしか見つからなかったので、会社さんのお役には立てました。

 

償却資産税は1.4%なので、300万円分の資産だったら一番大きくても42,000円。

(耐用年数調べるのが面倒だったので償却考えてませんが)

 

これを大きいと見るか小さいと見るかは会社さんによるんでしょうが、納めなくてもいい税金を納めていただく必要はないと私個人は考えています。

 

なお、本記事は2016.7.24時点の法令に基づき記載しておりますので、ご了承くださいませ。