大切だけどアテにならない!?流動比率とは

超入門編

 

昨日の『損益計算書だけじゃなく私も見て! 貸借対照表の重要性』という記事で、経営者の方が覚えておくべきが指標として、「自己資本比率」というものをご紹介しました。
(しかし頭の悪いタイトルだな)

今回は流動比率というものについてご紹介します。

 

覚えておくべき指標② 流動比率

これも自己資本比率の次にわかりやすい指標で、名前を「流動比率」といいます。

流動比率はわかりやすいだけでなく、指標としてもかなり重要なものなので、自己資本比率と流動比率の2つはぜひ覚えておくことをおすすめします。

 

ものすごく大ざっぱな貸借対照表

昨日、貸借対照表の見本としてこんな図を例に出しました。

 

 

いえ、これでも間違ってはいないのですが、ご覧のとおりものすごく大ざっぱです(^_^;)

このなかの「資産」と「負債」、この2つは1年以内に入金する・支払うものかどうかを大まかな基準として、

  • 短期的に解消されるもの … 流動資産、流動負債
  • 長期的に解消されるもの … 固定資産、固定負債

と、「流動」「固定」という名前をつけて分けられることになります。

 

流動と固定で分けた貸借対照表

これをもとに流動と固定で分けますと、

 

 

といったような感じの図になります。

(本当は固定資産の下に「繰延資産」というものもあるんですが、小さめの会社さんだとそこまでないですし、ごちゃごちゃしてしまうので省略しています)

 

この「流動資産」、いまはひとくくりにしていますが、細かく分けますと、

  1. 現金預金
  2. 受取手形
  3. 売掛金
  4. 有価証券(売買目的のもの)
  5. 商品・製品
  6. 短期貸付金 …

などといったようなものがあり、現金預金を頂点として現金化しやすいもの、という基準で並んでいます。

現金はいつでも動かせる=流動性が高い、というとなんとなく「流動」という言葉が腑に落ちるでしょうか?

固定資産の代表は、土地、建物、車、備品などで、そう売りませんし、売りにくいものですよね。

なのでそういうものはどんどん下に下がっていく、というイメージです。

 

流動比率とは

ようやく流動比率とはなにかですが、「流動」という名前のとおり、流動資産と流動負債を比較した指標を言います。

上の図に数字を加えまして、

 

 

という会社があったとします。この会社さんは、

流動資産 200 > 流動負債 100

と流動負債より流動資産が大きいですよね。

この図のように流動負債より流動資産が大きい状態、であれば評価が高くなります。

 

なぜ評価が高いか

なぜ評価が高いかというと、

  • 流動資産 200 > 流動負債 100

という状態は、

  • 現金預金+1年以内に現金預金になるもの > 1年以内に支払われるもの

ということでもあります。

 

つまり、1年以内にいろいろ支払いがあるけど、うちはちゃんと払いきれるよ、と言えるから安心だと思ってもらえるのですね。

これがもし逆で、「1年以内に支払われるもの」のほうが大きい場合、「え、君の会社来年お金払えなくない?どうすんの?」と思われてしまいます。

 

流動比率の計算方法

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

これが流動比率の具体的な計算方法です。

自己資本比率と同じく、流動比率も高いほどよい評価になります。

 

たとえば上の事例を、仮に百万円単位だと考えて計算すると、200%ということになります。これはかなり安全な会社さんですね。

200万円 ÷ 100万円 = 2.00(200%)

 

どれくらいあればいいのか

これも自己資本比率と同じく、業種によって異なります。

が、一般的には120%くらいあれば安全、と言われています。

ただ飲食店などのように、売上が現金で入ってくるような会社であればこれより少なくても安全ですし、建設業のように売上の入金に時間がかかるような業種では、これぐらいあっても資金繰りが苦しくなることが往々にしてあります。

 

 

ここまで書いておいてなんだが

中小企業の流動比率はアテにならない

お手元にある決算書を見て、「あれ、うち全然120%に達してないんだけど」と思ったそこのあなた。

ここまで書いておいてなんなんですが、一般的な中小企業の流動比率の多くはアテになりません

なぜかといえば、貸借対照表をきちんとつくっていない税理士事務所はかなり多いからです。

 

指標に詳しくなりすぎても仕方ない

また、そのほかの指標として、「当座比率」「手元流動性」「固定長期適合率」などいろいろな指標があるのですが、当記事が対象としている中小企業の場合、正直いってそこまで指標に詳しくなる必要はありません

大事なのは、

  • 貸借対照表そのもの
  • 銀行が行う評価を知ることによって、評価の改善に役立てること

であって、いろんな指標を知ってドヤ顔することではないからです。

 

自己資本比率と流動比率を紹介した理由

そのうえで、私が自己資本比率と流動比率をご紹介したのは、

  • 評価にあたってこの指標は間違いなく使われるから
  • (経営者が理解してなかったらやばいくらい)わかりやすいから
  • 流動比率は実態とかなり違ったものになっているおそれがあるから

というのが主な理由です。

もちろん銀行が評価する指標はほかにもあるのですが、会社としてはまずアテにならない流動比率、異常に歪んだ流動比率を直すことが先決で、あとは経営上改善すべき点を改善していけば、自然と評価はよくなると私は考えています。

 

株などの投資をする方や、取引先が信用できるかを判断する場合はいろいろな指標を知っておくと便利ですが、貸借対照表そのものを見ることによって、

  • 資金繰りの問題を探したり、
  • 過剰在庫になっていないか調べたり、
  • 今後どれぐらいの投資をしていくか判断したり、

そういった経営の役に立てること、これが一番必要なことだというのが私の考えです。

 

 

まとめ

というわけで、流動比率とはなんぞや、というところを中心にまとめました。

 

昔は「税金計算だけちゃんとできればいい」という考え方が主流だったため、その決算書を銀行などの他人がどう見るか、には大して関心が払われていなかったというのが税理士業界の実情です。

そういう考えの税理士がつくった貸借対照表は、結構ひどいことになっていることがままあります。

なのでこの問題点の探しかた、改善のしかたを次回まとめたいと思います。

 

 

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