仕入れ(売上原価)を見直そう! 決算書の評価を高めるために

借入があるなら決算書を見直そう!

 

卸売業・小売業・製造業あたりの会社さまがメインですが、売上原価や製造原価が大きい場合に、売上原価を見直すポイントをまとめました。

 

見本品や消耗品としてつかったものがある場合

商品の中には、見本品として販促に使用したり、自社で消耗品として使用したりするものがあります。

たとえば化粧品の会社さんが、新製品をサンプルとして消費者の方に配るような場合ですね。

 

この場合、会社さんで意図して分けない限り、その見本品などの部分も

  • 仕入れ(売上原価)として計上され、
  • 粗利益(売上総利益)が実態よりも悪くなる

ということが起きてしまいます。

売上原価というのは、あくまで売れたものの原価の金額ですので、売れてないものが売上原価になってしまうと、その分粗利益が悪くなってしまうわけです。

 

どうすればよいか

商品をどう使ったかというのは、正直に言って税理士事務所ではわかりません

なので、会社さまで

  • 何を
  • いくつ
  • いくら
  • 何につかったのか

を把握して、税理士事務所にお伝えいただく必要があります。

そして、その金額を、売上原価ではなく「販売費及び一般管理費」で処理します。

(税理士事務所からお聞きすればよいのですが、おそらく聞いてくれない方が多数だろうと思います。ただ聞いてくれる税理士さんもいらっしゃいますし、私もお聞きするよう努めています)

 

どんな効果があるのか

商品の中に、見本品や消耗品として使ったものがそれなりにある会社さんで、今までに分けたことがない場合、実態よりも粗利益が悪くなってしまっています

なので、特に経営努力をすることなく、

  • 粗利益率が改善する
  • 実態に合った、正しい粗利益率が計算でき、経営の役に立つ

という効果が得られます。

(経営は何よりもまず「現状を正しく認識すること」が大切です)

 

 

商品がなくなった場合、廃棄した場合

商品がなくなってしまったり、腐ったり壊れたりして捨てたような場合には、その分の売上原価を

  • 販売費及び一般管理費
  • 特別損失

などにすることができます。

 

具体的にどういった内容ならできるかは、

『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは④』

で解説しておりますので、ご参照ください。

 

 

仕入れの値引き・割戻し・返品があった場合

商品を大量に仕入れるなどした場合、仕入先から値引きや割戻しを受けることがあります。

また、返品するようなものがあった場合に、お金を返してもらうこともあります。

このときに気をつけなければいけないことがあります。

 

どのような場合に気をつけるのか

気をつけなければいけないのは、この値引き・割戻し・返品があり、別途お金が入金される場合です。

その値引き等の金額が、ほかの仕入れと相殺されることもよくありますが、そのときは会計処理として特に気にする必要はありません。

 

なぜ気をつけるのか

これは税理士事務所によるのですが、まれに入金された金額をそのまま「雑収入」などで計上しまう税理士さんもいるのです。

この処理は間違いで、本当は「仕入れ(売上原価)の金額をマイナスする」のが正しい処理となります。

(勘定科目は「仕入高」をそのままマイナスしても大丈夫ですし、「仕入値引」など別の勘定科目を使っておいて、決算のときに「仕入高」と「仕入値引」をぶつけるような処理をしても大丈夫です)

 

何がちがうのか

この処理のちがいにより、

  • 雑収入 → 営業外収益が増える
  • 仕入れのマイナス → 売上原価が減る

と影響を受ける場所が変わってしまいます。

 

これによって、「粗利益(売上総利益)」と「営業利益」が実態よりも悪くなってしまう、ということが起きてしまいます。

(経常利益は変わりません)

 

特に営業利益が悪くなってしまうのは評価するうえで大きなマイナスになりますので、該当する会社さんがいらっしゃったら、今すぐに見直すことをおすすめします。

 

ただし、似たようなものとして、本来の支払日より早く支払った場合に受けられる「仕入割引」というものもあります。

これはほとんど利息のようなものと考えられているため、この「仕入割引」だけは営業外収益となります。ご注意を。

 

 

売上割引があった場合

一つ上で「仕入れ」について説明しましたが、逆に売上先に対して、大量に買ってもらうなどして値引きや割戻しを行うこともあります。

これは残念ながら「売上高」からマイナスする処理をしなければなりませんが、やはり仕入れと同様、本来の入金日より早く入金してもらった場合に「売上割引」を支払うこともあります。

この「売上割引」は、ほとんど利息のようなものと考えられているため「営業外費用」となります。

 

何がちがうのか

この「売上割引」も誤って売上高からマイナスしてしまうと、仕入れのときと同じ結果ですが「粗利益(売上総利益)」と「営業利益」が実態よりも悪くなってしまいます

(経常利益は変わりません)

 

なので、もし該当する会社さんがいらっしゃったら、顧問税理士さんに売上割引の処理を確認してみましょう。

 

消費税に注意

これはおまけなのですが、利息と同じようなものとは言っても、

  • 利息 → 消費税がかからない
  • 売上割引 → 消費税がかかる(消費税がマイナスできる)

という違いがあります。

 

売上割引は納付する消費税を減らせますので、処理にはくれぐれも気をつけましょう。

(消費税がちゃんと減っているか不安な方は、税理士さんに聞けば答えてくれるはずです)

 

 

まとめ

というわけで、先週の『費用の中から特別損失を探そう! 特別損失とは①』等で書いた特別損失の探し方に続き、今回は仕入れ(売上原価)を見直す方法についてまとめてみました。

具体的には、

  • 見本品や消耗品としてつかったものがある場合
  • 商品がなくなった場合、廃棄した場合
  • 仕入れの値引き・割戻し・返品があった場合
  • 売上割引があった場合

が該当する項目です。

 

まとめたあとで言うのもなんですが、銀行が格付けをするときは基本的に「営業利益」「経常利益」を使いますので、今回の見直しをしたからといって格付けが劇的に改善するわけではありません。

しかし、

  • 粗利益率がよくなるため、担当者から見た評価は高くなる
  • 本来の、正しい売上原価が計算できる

といった経営に対するプラスの効果がありますので、ぜひ一度自社の処理を見直してみましょう。

 

 

 

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<あとがき>

時計の革バンドがぼろぼろになってしまったので、先日銀座の喜光さんへバンドの交換に行きました。

初めて伺ったのですが、そこの男性店員さん(店長さん?)の対応がものすごくよくて感激しました。

また何かあったらぜひ利用したいなと思えました。勉強になりました。

 

 

 

 

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読んでくださってありがとうございました