租税特別措置法の確定申告書等の定義 期限後申告書を含むのか

やや難しめの税金・会計話

 

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

税理士事務所(会計事務所)の方向けに、租税特別措置法の「確定申告書」の、「等」がどこまでを含むのかについてまとめてみました。

税理士事務所向けと言いますか、条文を読み出す時期の方向け、という感じです。

 

なぜ定義が気になったのか

私がなぜ「確定申告書等の定義」が気になったのかというと、条文を読んでいるときにこんな文言が出てきたからです。

 

(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)
第四十二条の六[抜粋]
9  第一項及び第二項の規定は、確定申告書等に特定機械装置等の償却限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。

租税特別措置法

 

この文を読んで、「ということは修正申告書につけてもダメなのか? 期限後申告書も?」という疑問がわいたわけです。

 

 

定義の確認

どう書いたらわかりやすいのか迷ったのですが、この記事の目的として、

  • 条文の調べ方もわからなかったあの頃の自分に(自分のような人に)
  • どう調べていくのかの過程も見せたい

というものもありますので、ひとまず私が追っていった順に沿いたいと思います。

最後にまとめを作りましたので、結論だけ知りたい方はそちらをご参照ください。

 

租税特別措置法

まず、e-Govで租税特別措置法を見てみました。

 

条文

(用語の意義)
第二条[抜粋]
2  第三章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二十七  確定申告書等 法人税法第二条第三十号 に規定する中間申告書で同法第七十二条第一項 各号に掲げる事項を記載したもの及び同法第百四十四条の四第一項 各号又は第二項 各号に掲げる事項を記載したもの並びに同法第二条第三十一号 に規定する確定申告書をいう。
三十  修正申告書 国税通則法第十九条第三項 に規定する修正申告書をいう。

租税特別措置法

※「法人税法の特例」は第三章なので、第二項の定義を見ます。

 

要約

すーぐほかの法律読まそうとするんだから。というなまけた気持ちを吐き出しつつ、とりあえずこの条文だけ見た場合の解釈として、

  • 中間申告書(ただなんか条件もありそう)
  • 確定申告書

が「確定申告書等」なんだなということがわかります。

号が分かれているので、修正申告書は含まない、ということもわかりました。

(修正申告書を含める規定には、「確定申告書等及び修正申告書」と書かなければならないということですね)

 

法人税法

次に、法人税法をやはりe-Govで調べてみます。

 

条文

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
三十  中間申告書 第七十一条第一項(中間申告)又は第百四十四条の三第一項若しくは第二項(中間申告)の規定による申告書をいう。
三十一  確定申告書 第七十四条第一項(確定申告)又は第百四十四条の六第一項若しくは第二項(確定申告)の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう。

法人税法

※ 第百四十四条の三、第百四十四条の六は外国法人についての規定なので、特段言及しません。

 

要約

一旦中間申告書を除外して話を進めますが、そもそも法人税法上の「確定申告書」という言葉には、

  • 確定申告書(期限内申告書)
  • 期限後申告書

が含まれているのだ、ということがわかりました。

修正申告書は含まないが、期限後申告書は含む、ということですね。

 

この定義の範囲についての裁決がある

国税不服審判所の平13.11.6裁決で、ものすごく簡略化していうと、

「自主的に提出した修正申告書は期限後申告書とほとんど同じようなものなんだから、この確定申告書等に含めてくれ」

というような内容の争いがありました。

 

結果としては、

「明記してあるのは期限後申告書だけで、修正申告書は規定されてないんだから、だめだよ」

と却下されて終わっています。

 

中間申告書は?

また、この租税特別措置法の「確定申告書等」に含まれる中間申告書は、

  • 法人税法第二条第三十号に規定する中間申告書で、
  • 同法第七十二条第一項各号に掲げる事項を記載したもの

ということになっています。

 

この法人税法第七十二条は、「仮決算をした場合の中間申告書」についての規定です。

つまり、租税特別措置法の「確定申告書等」には、

  • 仮決算をした場合の中間申告書が含まれ、
  • 前年度実績の中間申告書、いわゆる予定申告は含まれない

ということですね。

 

(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)

第七十二条  内国法人である普通法人(第四条の七(受託法人等に関するこの法律の適用)に規定する受託法人を除く。)が当該事業年度開始の日以後六月の期間を一事業年度とみなして当該期間に係る課税標準である所得の金額又は欠損金額を計算した場合には、その普通法人は、前条第一項各号に掲げる事項に代えて、次に掲げる事項を記載した中間申告書を提出することができる。ただし、同項ただし書の規定により中間申告書を提出することを要しない場合又は第二号に掲げる金額が同条の規定により計算した同項第一号に掲げる金額を超える場合は、この限りでない。
一  当該所得の金額又は欠損金額
二  当該期間を一事業年度とみなして前号に掲げる所得の金額につき前節(税額の計算)(第六十七条(特定同族会社の特別税率)及び第七十条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)を除く。)の規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額
三  前二号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項

法人税法

 

まとめ

というわけで、租税特別措置法の「確定申告書等」には、

  • 確定申告書(期限内申告書)
  • 期限後申告書
  • 仮決算をした場合の中間申告書

が含まれ、修正申告書は含まない、という話を、条文を引用しつつまとめました。

 

遅くてお恥ずかしいのですが、私は3年目ぐらいから意識して条文を読むようになりました。

これは当時の上司の影響が大きかったのですが、条文って読むとすごく面白くて、

「こんな精緻に規定されてるのか」

「へたな本読むより、条文読んだほうが要件わかるじゃん!」

と興奮したことを今でも覚えています。

それを女性の友人に熱弁したら「うーん、ちょっとキモいね☆」とにこやかに罵られたことをここに告白いたします。