太陽光発電設備の税制の移り変わり(2017年2月追記)

やや難しめの税金・会計話

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

買取価格についてもいろいろと改正が入っていますので、ピークの時よりはかなり少なくなっているでしょうが、現在も太陽光発電設備(以下「太陽光」)の導入を考えている方はいらっしゃるのではと思います。

太陽光はなかなか税制の移り変わりが激しいのですが、インターネットで調べると、それぞれの時期で書かれた情報がそのまま残っていて、特に時系列に沿ってどの制度を受けたらいいのか書いてあるものがあまりなかったのでまとめてみました。

 

税額控除・特別償却は漏れなく受けるべきものですので、検討の一助になれば幸いです。

なお、あくまで概要のため、制度を細かく記してはおりませんのでご注意ください。

 

● 当事務所では初心者の方向けの記事をたくさん書いております!
⇒ 【目次ページ】超入門編のブログ記事一覧
.
● 当事務所のサービスメニュー
⇒ メニュー一覧

 

1.2015年3月31日まで

2017年現在から考えると、この時期に言及しても適用しようがないのですが、結構この時期の制度の記憶が残っている方は多いようなので、参考までに。

 

 ■ グリーン投資減税

「環境関連投資促進税制」と呼ぶこともあります。正式名称は「エネルギー環境負荷低減設備等を取得した場合の~」とかいうややこしい名前です。

この制度は以下のどちらかを選択できます。

 

  • 即時償却 100%(買った金額の全額をその期の費用として計上可能)
  • 税額控除 7%(買った金額の7%の税金が減る)

 

※ どちらも補助金をもらっていると受けられず、経済産業省の認定書とか申請書も税務署への申告書につけないといけません。

※ 下の税額控除は資本金1億円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。

 

 

 

 

2.2016年3月31日まで

グリーン投資減税の即時償却が、太陽光に関しては2015年3月31日までしか適用できなくなりました(30%の特別償却に縮小されました。税額控除は7%のままです)。

「じゃあ100%償却できないのかあ」と思いきや、別の制度で受けられる道は残っていたのです。

(これももう過去の話なので、簡単に制度の内容だけご紹介します)

 

■ 生産性向上設備投資促進税制

こちらも同様に以下のどちらかを選択できます。

 

  • 即時償却 100%(買った金額の全額をその期の費用として計上可能)
  • 税額控除 5%(買った金額の5%の税金が減る)

 

この「生産性なんちゃら税制」には更にAとBの種類がありまして、どういう分け方かは別にして、必要な手続きをものすごくざっくり言うと、

 

A類型 … 買ったあとにメーカーなどから証明書を入手する
.
B類型 … 買う前に税理士などに頼んで「これ入れると利益が改善するんすよ」という確認書を出してもらい、経済産業省に申請する

 

 

とこのどちらかの手続きを踏まなければなりません。

通常はAのほうが事後でいいし簡単なのですが、太陽光に関しては設備全体について証明書を出せるメーカーがないため、設備を取得する前にBに対応してくれる税理士に依頼するのがよいでしょう(と言っても2017年現在では、即時償却を受ける条件がより厳しくなっていますが)。

というわけで、グリーン投資減税よりだいぶ手続きが大変になるものの、即時償却を受けることはできたというのがこれまでの流れです。

 

※ 下の税額控除は資本金1億円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。なので税額控除を受ける場合はグリーン投資減税(7%)を選んだほうが効果高くて簡単でした。

 

 

 

 

3.2017年3月31日まで(太陽光を売電以外に使う場合)

では今後受けたい場合はどうするかというと、これはその太陽光でつくった電気をそのまま売るのか、それとも自分の事業(たとえば工場など)の電気として使うのか、で適用が異なってきます。

順番が前後してしまいますが、電気をそのまま売る(売電)以外の場合から見ていきましょう。

 

■ 生産性向上設備投資促進税制 + 中小企業投資促進税制

こちらも同様に以下のどちらかを選択できます。

 

  • 即時償却 100%(買った金額の全額をその期の費用として計上可能)
  • 税額控除 10% or 7%(買った金額の10%か7%の税金が減る)

 

見出しが誤解を招く書き方になってしまっていますが、この新しく名前が出てきた「中小企業投資促進税制」は、その機械などを使う事業が、ある一定の定められた事業である場合に適用できる制度です。

ただこの「一定の事業」はそこそこ広いので、たとえば部品や食品をつくっている工場なんかに設置して、そこの電気として使う分には適用を受けることができます。

出さなければいけない書類は2番の「2016年3月31日まで」と同じですので、そちらをご参照ください。

 

※ 10%の税額控除は資本金3,000万円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。

※ 7%の税額控除は資本金1億円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。

 

 

 

 

4.2017年3月31日まで(太陽光を売電に使う場合)

その太陽光でつくった電気をそのまま売る場合、「電気業」といって東京電力とかと同じ事業をやっているという扱いになってしまうんですね。

すると3番で書いた「中小企業投資促進税制」の、「一定の事業」には電気業が入っていないために、この制度の適用は受けられずもう即時償却はできないことになってしまいます。

更にグリーン投資減税にも後述する改正が入ったために、縮小された「生産性向上設備投資促進税制」の適用を受ける以外の選択肢はほとんどなくなってしまいました。

 

■ 生産性向上設備投資促進税制

 

  • 特別償却 50%(通常の減価償却にプラスして、買った金額の50%をその期の費用として計上可能)
  • 税額控除 4%(買った金額の4%の税金が減る)

 

このどちらかを選ぶのは同様です。即時償却だったのが縮小されて、50%の特別償却になっていますね。

出さなければいけない書類は2番の「2016年3月31日まで」と同じですので、そちらをご参照ください。

 

※ 税額控除は資本金1億円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。

 

 

▲ グリーン投資減税

 

  • 特別償却 30%(通常の減価償却にプラスして、買った金額の30%をその期の費用として計上可能)
  • 税額控除 7%(買った金額の4%の税金が減る)

 

こちらも即時償却だったのが縮小されて、30%の特別償却になっています。

2つを単純に比較すると、特別償却なら「生産性向上設備投資促進税制」、税額控除なら「グリーン投資減税」、と分けられるようにも思えますが、ここで太陽光の範囲に改正が入ったので気をつけなければいけません。

2016年4月1日以降取得した太陽光については、「固定価格買取制度の 設備認定を受けていない 10kW以上の設備」と、「設備認定を受けた設備」から「受けていない設備」に対象が変わったため、完全にではないものの実質的に廃止に近い形となっています(役割を終えたという判断がされたようですね)。

 

※ グリーン投資減税は補助金をもらっていると受けられず、経済産業省の認定書とか申請書も税務署への申告書につけないといけません。

※ 税額控除は資本金1億円以下の法人などに限られ、法人税の20%が上限となります。

 

 

 

 

5.2017年4月1日以降(参考。2017年2月追記)

2016年12月に発表された与党の税制改正大綱で、終了する予定だった「生産性向上設備投資促進税制」が名前を変えて「中小企業経営強化税制」として存続することが発表されました。

 

まだ法案が通ったわけではないので不確定ではありますが、いずれにしろ売電目的の太陽光発電が除外されていく方向性は継続しているようです。

あくまで自分の事業に使うための太陽光発電設備が即時償却の対象になる可能性がある、ということですね。

(対象になる事業と対象にならない事業があります。「指定事業」といいます)

 

 

 

 

 

まとめ

というわけで、太陽光発電設備の税制の移り変わりについて、時系列でまとめてみました。

 

この記事を最初に書いたのは2016年7月なのですが、比較的アクセスを集めているため追記しました。

私がざっくりまとめた『平成29年度税制改正大綱』の記事を踏まえていますが、2017年4月1日以降は確定の情報ではありませんのでご注意ください。

 

税額控除や特別償却の適用漏れは、後から取り返すことができません。インターネットは本当に便利なものですが、特にこの税額控除などの税制は適用の時期が命なので、調べるときは時期を気にしつつ、信頼できる専門家に相談しながら進めましょう。

 

 

 

==============================

<あとがき>

自分がブログをやるときは何を参考にしたか根拠を書いておこうと考えていたのに、基本的にはそれぞれ条文そのままなので引用するとえらいことになってしまうためやめました。

第何条かだけでも書いておいたほうがよいのだろうか。

あと太陽光にはそのほかにもいろいろ論点があるので、それはいずれ書ければなあと思っています。

 

 

 

 

 

「お問い合わせ」では税制に対する回答は承っておりません。「具体的にこの事業は即時償却の対象になるか?」等、詳細をお聞きになりたい方は有料の『法人単発税務相談プラン』からお申し込みいただきますようお願い申し上げます。