こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
いやーあっというまに2月も終わりますね。
確定申告の準備、進んでいますか?
「もう終わったよ!」という方もいらっしゃるでしょうね。
こんな時期にやるようなものでもないものすごい小ネタなのですが、お客さまと話していて、
「あ、意外とわからない方が多いんだ」
と思ったため、読み方がわからない、読み方を間違えがちな単語の読み方をまとめてみました。
目次
「借入金」の読み方って? しゃくにゅうきん? かりいれきん?
まずタイトルにもつけた「借入金」。
これは「かりいれきん」と読みます。
特に有名な住宅ローン控除の正式名称が「住宅借入金等特別控除」などというものですから、
「しゃくにゅうきん?ですか?」
と疑問に思われる方が意外に多いのです。
(なので「じゅうたく かりいれきんとう とくべつこうじょ」と読みます)
読み慣れない単語だからわかりにくいですよね(^_^;)
「いやいや『かりいれきん』なら、『借り入れ金』か『借入れ金』じゃないとおかしいでしょうよ!」
という方のために、理由もあとで説明しますので、ご興味のある方は見てみてくださいね!
そのほかのあるある誤読漢字
そのほかの「わかりにくいかな?」と思うものについてもざっと読み方を書いていきますね。
所得税の青色申告決算書をもとにしているのですが、「あるある」と言っておきながら思っていたよりありませんでした(^_^;)
損益計算書編 貸倒金とは? 貸倒引当金との違いは?
■ 売上金額(うりあげきんがく)、売上高(うりあげだか)
■ 仕入金額(しいれきんがく)、仕入高(しいれだか)
まあ「ばいじょう」とか「しにゅう」とか読まれる方はいないと思いますが、これも後述の理由により「げ」や「れ」が省略されています。
■ 荷造運賃(にづくりうんちん)
■ 減価償却費(げんかしょうきゃくひ)
■ 外注工賃(がいちゅうこうちん)
■ 利子割引料(りしわりびきりょう)
■ 専従者給与(せんじゅうしゃきゅうよ)
■ 貸倒金(かしだおれきん) ⇒ 実際に回収できなくなってしまった売上などのお金
■ 貸倒引当金(かしだおれ ひきあてきん) ⇒ 回収できなくなりそうな売上などの見込みの金額(一定のルールあり!)
これは読み方もいまいちわかりにくいし、意味もわかりにくいですね。
■ 繰戻額(くりもどしかく)
■ 繰入額(くりいれがく)
貸借対照表編
■ 売掛金(うりかけきん)
■ 買掛金(かいかけきん)
これは「売上金額」「仕入金額」とそれぞれ対応しています。
「売上金額 ⇒ 売掛金」「仕入金額 ⇒ 買掛金」と対応している、ということですね。
■ 当座預金(とうざよきん)
■ 有価証券(ゆうかしょうけん)
■ 棚卸資産(たなおろししさん)
これは読み方だけでなく意味もわかりにくいかもしれません。
たとえば雑貨店などでいうと、その売っている雑貨、つまり「商品」のことですね。
「在庫」といったほうが事業をしている方には伝わりやすいでしょうか。
■ 受取手形(うけとりてがた)
■ 支払手形(しはらいてがた)
■ 前払金(まえばらいきん)
■ 前受金(まえうけきん)
■ 貸付金(かしつけきん)
■ 借入金(かりいれきん)
右と左でセットのやつをまとめてみました。
■ 建物(たてもの)
■ 建物附属設備(たてものふぞくせつび)
■ 機械装置(きかいそうち)
■ 車両運搬具(しゃりょううんぱんぐ)
■ 工具 器具 備品(こうぐ きぐ びひん)
「運搬具」ってなんだよって思いませんでしたか?いつの時代だよ的な(私だけでしょうか。。)
■ 預り金(あずかりきん)
■ 未払金(みはらいきん・みばらいきん)
この「未払金」がなかなか曲者(くせもの)で、私は簿記を勉強しているときずっと「みばらいきん」と読んでました。
でも、
- 税理士事務所の方は「みはらいきん」と読む方が多い
- 漢字変換するとき、「みはらいきん」だと変換され、「みばらいきん」だと変換されない(「未払い」「金」で分かれる)ことがあった
ので「みはらいきん」と読むことにしました。ときどき「みばらいきん」になっちゃいますけど。
(いま変換してみたら「みばらいきん」でも変換されました。当時はできなかったのか、私の記憶違いかは謎)
■ 元入金(もといれきん)
「元入金ってもといれきんって読むんだ。読み方わかったけど、これなんなの?」
という質問をお受けしたとして、元入金がなんなのか、という話を丁寧にすると多分ひと記事書けます。
が、そこをあえてざっくり言うと、
- 事業をはじめたときに入れたお金がまずある
- その後利益が出れば増えて赤字が出れば減る
- 事業のお金を、事業以外で使いすぎると減り、事業以外のお金を事業用にあてると増える
みたいな感じでしょうか。
(全然ざっくりじゃない。。)
えーいもう会計ソフト使ってるんなら特にさわる必要ないやつです!
これでどうだ!
番外編 青色申告決算書には載っていないけれど
青色申告決算書には載っていないのですが、ときどき質問されるものも挙げておきますね。
- 仮払金(かりばらいきん)
- 仮受金(かりうけきん)
- 前払費用(まえばらいひよう)
- 前渡金(まえわたしきん)
などなど、基本的には「訓読み+音読み」というケースが非常に多いです(なぜかは謎)。
ただこの「前渡金」がまたしても曲者(くせもの)で、人によっては「ぜんときん」と言ったりもします。
「なんで突然の音読みだよ!!」
と私は(心のなかで)叫んだものですが、いま検索してみても原因がはっきりしません。
まあ原則は「まえわたしきん」で、職場の方や取引先の方が「ぜんときん」と言ってたら合わせたらいいと思います。
(『白黒つけろよ! マイナスの表示は-か△か▲か問題』で書いたような長いものには巻かれろ理論)
なんで「借り入れ金」にならないの? おかしくない? 法律上の送りがなのルール
ここからは興味のある方だけ読んでもらえればいいのですが、たとえば「借りる」の「りる」のところを送り仮名(おくりがな)といいます。
で、この送りがな、法律のときにはルールがありまして、ざっくり言うと「後ろに漢字があるときは送りがなを省略する」的なルールがあるのです。
(本当はもう少し細かいようですが、あくまでざっくり言うと)
法律上の送りがなのルール
なので、たとえば「借り入れる」の名詞として「借り入れ」という言葉を使う場合、
1.まず「借り入れ」の「り」は「入」があるために省略される
ということになり、「借入れ」になります。
つまり単独で「借り入れ」という言葉を使う場合、たとえば、
「君の僕からの借入れはえらい金額だな。はよ返せ、もしくは破滅せよ」
という感じで「れ」だけが残ります。
ただ「借り入れ」という単語は、基本的には「金」とセットで使いますので、
2.「借入れ」+「金」で、「れ」が省略されて「借入金」になる
ということですね。
法律上の送りがなの例文
たとえば「所得税法」という法律のなかでも、このルールにもとづき、
第五十七条の三 居住者が、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいう。
と「れ」を残したものもあれば、
附 則 (平成一九年六月一三日法律第八五号) 抄 第六十六条 政府は、附則第一条第三号に定める日までに、電気事業会社の日本政策投資銀行からの借入金の担保に関する法律
と「金」がつくことにより「れ」が省略されたものもあります。
これが法律上の送りがなのルールです!
(附則ですしほかの法律名が書いてあるだけですけどただの例文なのでご容赦くださいませ……)
おわりに 「付」と「附」の違い
というわけで、所得税の確定申告でのあるある誤読漢字の読み方をまとめてみました。
ちょろっと書こうと思っていたのに余談をはさむせいで意外なボリュームに(^_^;)
ちなみに「建物附属設備」「寄附金」などのように、一般的には「寄付」などと書かれるものも「附」とやや難しい漢字で書かれることがあります。
調べたら「付」も「附」もほぼ同じ意味で、かつ両方常用漢字のようです。
昔は「附」のほうが主流だったから残っているだけ、ぐらいの捉え方でもいいようですね。要は同じだからどっちでも気にしなくて大丈夫です。
(「もうこの附は無くていいんじゃね?」みたいな議論が一時期あったようで、その影響もあり新聞ではほとんど「付」で統一されているそうです)
私は(ぎりぎり)法律を扱う人間なので、法令上の用語的なときは「附」を使いますが、お客さまへの説明などは「付」にすることが多いです。
漢字が大好きなためついつい長くなってしまったが、なにかの参考になれば幸いでございます!
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