節税嫌い 安定した土台を築いてもらうために、あえて「節税」という言葉を遠ざけてみる

節税方法あれこれ

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

「節税嫌い」という少し過激なタイトルになってしまいましたが、前からずっと考えていて、最近言語化ができたことがあります。

 

それは、「自分は『節税』という言葉が好きじゃないんだ」ということ。

 

税理士などが出した本で「節税」とつくものはたくさんあります。

また、「節税」を謳ったブログも数多くあります。

(私も書いています)

 

しかし「節税」という名前がつく手法の多くは、実際には節税でもなんでもないことも多いのです。

 

よく聞かれる、

「せっかくがんばって稼いだのに、税金として持って行かれるんじゃなんのために稼いでるんだかわからないよ」

という不満に対しても、いままでは「そうだよな、社長がんばってるのにな」と思っていたのですが、いまは日本で商売をしていくならその考え方のままじゃいけないんだ、という考え方に変わりました。

 

自分の見せ方を整理していく目的もあり、これらのことについて、2018年3月時点の私のスタンスを書いていきます。

 

 

「節税」という言葉に踊らされてはいけない

冒頭で、

「節税という名前がつく手法の多くは、実際には節税でもなんでもないことも多い」

と書きましたが、かくいう私も『節税方法あれこれ』というカテゴリーをつくって記事を公開しています。

 

これはひとえに、

「節税を駆使できる税理士、というイメージを持ってもらえたほうが柔軟な対応をしてくれると思ってもらえそう」

などと打算したためです(あくまで私の場合は)。

 

でも自分が書いたブログを含め、「節税」と謳う手法の多くは節税でもなんでもありません。

たとえば私が書いた『利益が出てたら固定資産を捨てよう 片付け上手は節税上手』という記事。

この記事、序盤に「すでに捨てていて手元にないのに、帳簿上は残ってしまっている資産があれば廃棄する処理をしましょう」というようなことを書いています。

 

同じことが節税術として書いてある本も多くありますが、実のところ、こんなの節税でもなんでもないんです。

だって実際の状態と、会社の数字とをちゃんと一致させましょう、というだけのことですから、むしろ一致してないほうがおかしいんです。

 

こんなの決算のときにでも、税理士が社長さんに「これまだあります?」とひと言聞けばいいだけなんですが、ただ こんな基本的なことをしていない税理士もいるから「節税として機能し得る」というだけ のことなのです。

 

(なので正確に言うのなら、節税というより「過去多めに税金払ってた」です。お金が早く減ってしまうので、見逃すべきではないし、そういうものがあるなら早く正しい状態にすべきですが、「節税」というのは違うよなと)

 

 

 

条件が合うなら取り組むべき節税と、そのほか

別記事でまとめる予定ですが、節税は、

  • 条件が合うなら取り組むべき節税
  • そのほか(税金も減るけどお金も減る)

とに分けることができます。

 

「条件が合うなら取り組むべき節税」の代表的なものは、

などです。

 

 

「節税のすべてが悪い」という話ではなく、できることをきちんとやって、そのあと税金を払って、そのあとにいくら手元のお金が増えるのかに着目しましょう、というのが本意です。

実際「すべき節税」と思っている社宅の記事では、「節税」「節税」と連呼しまくっています。

 

 

ただ人が「節税」と口にするとき、求めるときは、

「よくわからないから税金のことを考えないようにしていて、いざ払う段階になって自分の想定以上の金額が出てくると嫌だから、『節税』という言葉を使って実態以上に税金が減らないかと期待している」

ことが多いんだな、という感覚を言語化できたので、あえて「節税嫌い」という強い言葉を使いました。

 

あくまで私の考えですが、「条件が合うなら取り組むべき節税」以外のものは、 原則としてあえて積極的に取り入れる必要はありません

たとえばいつも超えないのに、たまたまその年の所得が800万円を超えて税率が上がってしまう見込み、といった税の仕組みを考慮したうえでの多少テクニカルな活用が必要な場面もありますので、そういうときにはご提案することがある程度です。

 

 

 

 

「どんなに頑張って稼いでも、税金として持って行かれている」という言葉の間違い

「どんなに頑張って稼いでも、税金として持って行かれている感じがする」

というのはよく言われる不満ですし、気持ちはものすごくわかります。

私も「そりゃそうだよな。社長がんばってるのにな」と思っていましたし、自分自身が確定申告をするときにも感情としては思います。

 

でも、税理士という職業柄、いろいろな会社さまと継続的にお付き合いをしていくと、この考え方の社長さんはずっと同じ不満を抱かれていることに気が付きました。

その一方で、拡大するしないはさておき、潤沢な資金があり、お金に関する不安が少ない、安定した気持ちで経営をされている方はこう言っていることに気がつきました。

 

「税金は経費だからね」

 

「税金は儲けたらかかるもの」と割り切って、「税金を引いたあとにいくらお金が残るのか」をシビアに考えていたのです。

 

税金を考慮に入れたうえで、税金を引かれたあとでも納得できるだけのお金を手元に残す。

 

日本に拠点を置いて商売をする以上、そうでないと「稼いだ」とは言えないのです。

 

たしかにサラリーマンのときは、給料から勝手に税金が引かれていつのまにか税金の計算が終わっていました。

独立したら自分で納めるようになるのだから、「こんなに税金払うの?」という気持ちになるのはよくわかります。

でもその「税金を自分で払う」という行為も、経営者になる、自分の人生の舵取りを自分でする、ということの一部なのです。

そしてそこを乗り越えられるようサポートすること、それこそが自分の仕事なんじゃないか、といまは考えています。

 

 

経営は時にリスクを取らなければいけない そのときに踏み出せる足場づくりを

経営は時にリスクを取らなければいけません。

リスクを取らなければいけないときに、不安定な足場からスピード感をもって踏み出すことができるでしょうか。

リスクを取りに行くことができるのは「安定した足場」があってこそです。

そしてその「安定した足場」は、会社にも個人にもきちんとお金があってこそ築き上げられるものだ、と私は考えています。

 

税金のことだけを考えるなら、税率の違いがあるので、個人の給料を最低限にして、会社で利益を出しておけばそれだけで節税を果たせます。

でも会社経営には絶対に波があります。

苦しいとき、いざというときに「えいやっ」と会社にお金を投入できるのは社長しかいません。

そんなとき、節税のために個人の給料が最低限しかなく、何も身動きがとれない状態になったときに後悔しても遅いのです。

 

会社で手元にお金を残しながら、税金などを引かれたあとの、自由に動かせるお金も社長個人のほうで蓄えておく。

本当に最後の最後の、苦しい「いざ」というときに役立つのはやっぱりお金です。

お客さまに意図しない、無念の廃業をさせない。

そのときのために、いまから何ができるのかを提案できる税理士でありたいなと。

 

 

プライベートの出費を「どうにか経費にできないか?」と考えるより大事なことがある

わざわざプライベートの出費を持ってきて「これどうにか経費にならないですか?」って訴えるより、仕事の経費は漏れなくしっかり経費にして、プライベートはプライベートと割り切る、そうしたほうが絶対に気持ちがいいし、心の安定を得られます。

 

「税金やだ!」と言って常に経費を探し求める社長に、私は品格があるとは思いませんし、自分がなりたいとも思わないし、私のお客さまになってほしいとも思いません。

そんなことをするより「本業でいかにもっと結果を出せるか」を考えて行動することのほうが100%重要です。

 

「お前の意見はいいから節税提案しろ。それこそが税理士の腕だ」

という方とは、私は合わないのでご依頼をいただかなくて構いません。

ただやるべきことをしっかりとやり、あとはしっかりと利益を出して、ちゃんとした金額の役員報酬も払って、会社と社長個人にお金を貯めていただく。

そのための気をつけるべき点や、対策について提案できる税理士でありたい。

 

 

 

 

「Amazonやスターバックスなどのように税金を回避するのは会社の義務だ」説

また、「Amazonやスターバックスなどのように税金を回避するのは会社の義務だ」といったような言説を聞くことがあります。

 

私はこれはそのとおりで、「払わなくてもいい税金を払う必要はまったくない」と考えています。

それを、「条件が合うなら取り組むべき節税」として合う方にはご提案しています。

 

ただ混同してはいけないのは、

「Amazonのようなグローバル企業と、日本の中小零細企業を同一視してはいけない」

ということです。

 

彼らはどの国に本社があろうが関係なく商売ができるから、とれる選択肢のひとつとして税率が安い国を選んでいるわけです。

それに憧れるのであれば、自分もそういうビジネスをしてそういう国を選ぶしかありません(そのこと自体を否定はまったくしません)。

 

ただ 多くの日本の中小零細企業は日本で商売している のです。

それ以上でもそれ以下でもありません。

日本で商売をするなら、日本の法律を知り、守らなければいけないのです。

法律は「知りませんでした」ではまったく通りません。

税金もまた法律のひとつであり、できることをする、そのうえで課税されるものがいくらかを正確に知り、それを考慮したお金を残せるよう努力する。

少なくとも私は「節税」ではなく、「いくらお金が残るのか」「いくらのお金が必要なのか」を見つめてお客さまと共有できるようにする専門家でありたいと考えています。

 

一見耳当たりのいい「可能なかぎりの節税をすることが経営者の義務だ」を、過剰に信じてはいけません。

あなたと会社のお金を守れるのは、最終的にはあなたしかいないのです。

 

 

 

 

自分と合うお客さまと付き合い、関係を続けていくためにできることを

独立してもうすぐ2年で、幸いいろいろなお話をいただけるようになってきて、ご依頼をお受けできる上限が少しずつですが近づいてきた感覚があります。

 

そのため、自分の感覚と、自分が「経営者の方が必要な心構え」と思うことを整理し、もっと入口を絞ることで、

  • より自分のスタンスと合うお客さまに来ていただく
  • お互いのミスマッチをなくす

という努力がもっともっと必要なんだろうと、現時点で感じたことについて正直に書いてみました。

 

今後少しずつサービスメニューなどの仕事関連のページをつくり変えていく予定です。

もっと自分に合う方に、あとで「ああ、あのときああ言われてよかったんだな」と思ってもらえるようなサービスを提供していきたい。

いろいろなことを楽しみつつ、しあわせな仕事ができることに感謝しています。