こんにちは。図解ざっくりめがね税理士の谷口(@khtax16)です。
社長さんからよく聞かれる質問のひとつに、
社会保険について
があります。
私は税理士なので、社会保険は専門というわけでもないのですが、
- 仕事的にかなり近い
- 会社・個人のお金にかなりの影響がある
- 開業から間もない会社さん・人数の少ない会社さんには社会保険労務士に依頼する余力がない
ということもあって、よっぽど専門的な知識が必要なもの以外はお答えできるよう勉強しています。
(ちなみに社会保険の専門家は社会保険労務士さんです)
上にも書いたように、社会保険は会社にも個人にもかなりの影響があるので、法人をつくるなら最低限社会保険のことは知っておくべきです。
たとえば、
「正社員を雇いたいけど、会社の余力的に年収400万円が限界。。」
「今年はボーナス払えそう。合計で500万円くらいかな」
というように、お給料の額面だけで考えている場合はとても危険です。
そんな社長さんに向けて、「社長が知っておくべき最低限の社会保険の知識」を図解つきでまとめてみました!
・「法人つくるぞぉ!」という野心でメラメラの方
・「法人つくったぞぉ!」「でも税金のこととかよくわかってないぞぉ!」とお悩みの方
目次
会社の社長が知っておくべき最低限の社会保険の知識
社会保険の概要を書くにあたって、順番としては、
- 自分も社会保険の対象なの?(ざっくり加入要件)
- 会社にどんな影響があるの?(ざっくり金額)
- 社会保険ってどんな仕組みなの?(ざっくり概要)
と、おわりに多少の余談を挟みつつ解説していきたいと思います。
誰が対象になるの? 社会保険のざっくり加入要件
はじめに、まちがった認識をされることがよくあるのが、
「自分一人の会社だから社会保険入らなくてもいいんでしょ?」
というもの。
これは明確な間違いで、ひとり社長であっても基本的に社会保険に加入することが必要です!
ひとり社長でも社会保険の加入は必要! 個人事業との違い
法人の代表者や役員に対して、お給料を払うなら基本的に社会保険の加入は必要です。
これが個人事業(自営業)との大きな違いで、個人事業であれば、
- 従業員が5人いなければ入らなくてOK
- 飲食業など、一部の業種は入らなくてOK
という例外があるのですが、このような例外が法人にはないのです。
次の項目で説明するように、社会保険に入ることでかかるお金が変わってきますので、特に法人を設立するシミュレーションをするときは社会保険料の負担のことも頭に入れておきましょう。
非常勤役員であったり、お給料が少なくてほかの家族に扶養に入っていたりすることで、社会保険に入らなくてもいい役員もいます。
※ ただ代表役員(代表取締役等)、つまりひとり社長はこういった場合でも通常社会保険の加入が必要です
社会保険に入ったらどれぐらいお金かかる? 社会保険のざっくり金額
そしてこれも質問としてよくあるのが、
「社会保険に入ったらどんな影響があるの?」
ということです。
私はこういうとき、お給料に約15%の支払いが上乗せされると考えてください、とお伝えしています。
(もう少し詳しくは後述します)
たとえば、冒頭の例で言うと、年収400万円の正社員を雇う場合は、
- 年収400万円(額面金額)
- 社会保険料を会社が負担する金額 約15%の60万円
- 合計460万円
は、最低でもかかる、ということです。
このほか交通費もかかりますし、机などの備品も増やさなくてはいけませんので、お金はもっと必要になります。
「400万円の余力がある=年収400万円の人が雇える」
とは決して考えないようにしましょう。
(いまの時代だと「求職者が応募してくれる年収はいくらか」のほうが大事かと思いますが)
社会保険を逆算してみる
冒頭で書いたボーナスも同様に、上限はありますが約15%社会保険料が上乗せされる、という考えを持っておくことは必要です。
ただボーナスの場合は、新しく採用する場合と比べると追加のコストはほとんどないため、
出せる金額 ÷ 1.15
で考えるのはひとつの方法です。
上記のように漠然と「合計で500万円ぐらい出せそうかな」と思うのであれば、
500万円 ÷ 1.15 = 約430万円
がボーナスとしてみんなに支給できる金額、ぐらいに考えておかないと、自分の計算以上にお金が減ることになってしまい、あとでひいひい言うことにもなりかねません。
社会保険ってどんな仕組みなの? 図解でのざっくり概要
というのが、
- どんな会社が関係するの?
- どんな影響があるの?(お金の話)
なのですが、ここで社会保険というものがどういう仕組みなのか、図解で見ていきましょう。
私も社会保険社会保険と言っていますし、世の中的にもそう言われることは多いのですが、この「社会保険」、ざっくり言うと2つのものでできています。
上の図のようなもわっとしたものではなく、社会保険は「健康保険」と「厚生年金」でできているのです。
社会保険は健康保険と厚生年金でできている
で、その2つでできているわけなのですが、これをそれぞれ会社と社員で折半しています。
「社員」には役員の方も含まれています。
ここに具体的な料率を足しますと、こんな感じです。
(2017年11月の東京の例です)
健康保険は、
- 都道府県によって率が違う
- 40歳以上だと介護保険が追加される
という特徴があります。
社会保険料は会社と社員で折半する! 上限もあるよ!
この料率はあくまで会社と社員を合わせた金額なので、
・40歳未満の方 (9.91% + 18.182% )÷ 2 = 14.046%
・40歳以上の方 (11.56% + 18.182% )÷ 2 = 14.871%
が会社が負担する率ということです。
特に試算をするときは高めで見たほうがいいことと、単純に覚えていただきやすいこともあって、私は「約15%」というご説明をしています。
後日まとめる予定ですが、本当は労働保険(雇用保険)というものもあり、それも含めた率で考えるとより現実に近い数字となります。
ただ労働保険は業種によってだいぶ率が変わるのと、社会保険に比べれば影響が小さいです。
(事故が多い業種でなければ1~2%ぐらいだったりします)
また、正確には給料×社会保険料率ではありません。
「標準報酬月額」というものがあるのですが、仕組みの説明でそこまで言うとややこしいかなと思うので省きます。
通常の中小企業だとそこまで大きくは違わないためですが、
- 健康保険 ⇒ 月の給料135.5万円以上
- 厚生年金 ⇒ 月の給料60.5万円以上
という上限があり、それ以上の給料をもらっても健康保険・厚生年金で取られる金額は増えない、ということは覚えておいても損はないでしょう。
社会保険の料率は毎年変わるので注意!
これは余談に近いですが、社会保険の料率はだいたい毎年変わります。
- 健康保険 ⇒ 毎年4月ごろ(上がったり下がったり)
- 厚生年金 ⇒ 毎年9月(必ず上がる)
という感じだったのですが、厚生年金のアップは2017年9月に終了しました。
10年以上ものあいだ、毎年小幅なアップが続いていたわけです。
そのため、当面厚生年金の料率は18.182%で据え置くことになります。
(また法改正があった場合にはどうなるかわかりません)
社会保険の料率を調べたいとき、私は協会けんぽのwebサイトで「時期」と「都道府県」を指定して調べています。
【さらに詳しく知りたい人向け】子ども・子育て拠出金というものもある
以上が社会保険のざっくりした仕組みですが、もう少しだけ書くと、この2つに加えて「子ども・子育て拠出金」というものもあります。
これは、
- 厚生年金にくっついている
- 児童手当の財源の一部になっている
- 社員の負担はなく、会社のみが負担(料率は0.23%)
となっています。
健康保険や厚生年金と比べるとごく少額ではありますが、一応解説の図だけ載せておきます。
社会保険の呼び方 社会保険?社保?しゃほ?
これは完全な余談ですが、社会保険は「社保(しゃほ)」と略して会話に出てくることが多いです。
社会保険労務士さんも「社労士(しゃろうし)」と略されることが多いですね。
税理士や社労士が「しゃほしゃほ!!」と言っていたら、「なんかこいつ楽しそうだな」ではなく「ああ、社会保険の話か」と思っていただけましたら。
国民健康保険や国民年金との呼び名の対応関係
呼び名つながりで言いますと、
- 自営業(個人事業主) ⇒ 国民健康保険、国民年金
- 社会保険 ⇒ 健康保険、厚生年金
というもので対応しています。
社会保険の「健康保険」って、個人的にはわかりにくいなあと。。
「協会けんぽ」「政府管掌健康保険」などと言われることもありますが、個人的な印象では「協会けんぽ」が多い気がします。
社労士さんの中ではなんか言い方があるのかもしれませんね。
まとめ 社会保険の対象と金額と仕組みについて
というわけで、
- 自分も社会保険の対象なの?(ざっくり加入要件)
- 会社にどんな影響があるの?(ざっくり金額)
- 社会保険ってどんな仕組みなの?(ざっくり概要)
- 社会保険の呼び方について(余談)
という内容をまとめてみました。
余談続きで恐縮ですが、私の前職のときの尊敬する師匠が、
「おれ今月から介護保険だよ。。」
と嘆いていることがあって私はアハハと笑いましたともに悲しみに打ちひしがれました。
笑った以上あと約7年後に自分が笑われることも、武士が切腹を待つがごとき心持ちで覚悟しております。
ざっくりで大丈夫ですので、会社の経営に関わる仕組みについては把握しておくようにしましょう!
⇒雇用保険についても書きました!
『「従業員を雇う」その前に!社長のための雇用保険のお金と仕組み』
⇒ 【目次ページ】超入門編のブログ記事一覧
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