こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
『社長への給料にはルールがあるって知ってる? 役員報酬の払い方2つをざっくり解説!』という記事で、
社長(役員)の給料は毎月同じ金額を支払わないとだめですよ!
というお話をしました。
そして同時に「新しい期が始まってから3カ月以内なら変えることもできます!」というお話をしたのですが、そうすると気になるのが、
「じゃあ具体的にどういう流れで社長の給料を決めていったらいいの?」
ということ。
今回はこの
- 役員の給料を決めるスケジュール
- よくある疑問5つ
について、ごく基本的な流れを解説しますね!
目次
定期同額給与とは 毎月同じ金額の給料を払うこと
社長の給料の概要
社長(役員)への給料については、毎月同じ金額を払うこと、というのが基本の形になります。
これには「定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)」という名前がある、というのが『社長への給料にはルールがあるって知ってる?』で解説したことでした。
さて、その毎月の役員の給料を決めるときには、以下のような流れがあります。
- 決算が来る
- 決算後3カ月以内に株主総会をひらく
- そこで役員の給与を決めれば変えてOK!
図にするとこんな感じですね。
(左上の踊るメキシコ人は私の趣味なので気にしないでください)
疑問点
と、ここまで見て
「うち株主総会なんて開いてないんだけど」
「いや決算終わったらすぐ上げたいんだよ」
と思ったそこのあなた!
具体例をもとに一つ一つ解説していきますのでもう少し見てみてくださいね。
役員報酬を決めるスケジュール 具体例
たとえば2016年7月に会社を設立した12月決算の会社があったとします。
株主も社長もあなた一人の会社です。
この会社を例に、具体的な流れを見ていきましょう。
設立の年の役員報酬
7月に会社を設立したあなた。
ある程度の売上を見込めるものの、先行きがまだわからないので、とりあえず月20万円の給料をもらうことに決めました
これを毎月支払うことで会社の経費にすることができます。
次の年の役員報酬
さて、12月になって決算の時期がやってきました。
売上も多少軌道にのってきて、「給料は月40万円ぐらいもらえそうだな」と思ったあなた。
そのときやることは、
- 決算のあと株主総会を開いて、
- 給料を40万円に上げることに決め、
- 3月から実際に支払いはじめる
これだけです。
これで3月からアップできました!
役員報酬のよくある疑問5つを解説
と、役員報酬を決める流れとしてはこれだけなんですが、役員報酬によくある疑問として、
- お金がなくても支払わなくちゃいけないの?
- いくらにしたらいいの?
- 株主総会開いてないんだけど……
- 必ず3カ月以内?決算終わったらすぐ変えたい
- 役員報酬は下げてもいいの?
というものがあります。
これを順に解説していきますね。
疑問1 役員報酬はお金がなくても支払わなくちゃいけないの?
よく聞かれるのが「お金がないときはどうしたらいいんですか?」という疑問。
これは支払わなくても大丈夫です。
ただ社会保険などはかかってしまいますし、所得税の取り忘れを防ぐために税金関係も毎月引いてしまうことが実務上は多いです。
要は手取り額だけ溜めておける、という言い方のほうがイメージしやすいでしょうか。
経費にはなるので注意!
ただ取っても取らなくても「役員報酬」という経費にはなってしまいますので、銀行からの借入がある場合など利益を出す必要があるときは不利になることもあります。
やはり1年に1度しか決められないものですので、事前にいろいろな要素を検討したうえで決めるようにしましょう。
疑問2 設立時の役員報酬はいくらにしたらいいの?
2期目以降は前年の様子を見ながら上げたり下げたりすればいいのでそれほど問題にならないのですが、特に設立時に多いのが「役員報酬はいくらにしたらいいの?」という疑問。
これは、
- 法人成りなのか(個人事業から始めて法人をつくったのか)
- 事業を始めて最初から法人にしたのか
で変わってきます。
法人成りの場合の役員報酬
個人事業から法人にした場合は比較的簡単で、個人事業のときの所得の金額を基準に決めるといいでしょう。
また、
- お金を法人に残したいのか、個人に残したいのか
- 個人にほかに収入があるか
- 銀行からの借入があるか
などに応じて変えるのが望ましいです。
ただどういう方向性にせよ、最初はお金を法人に溜めておいたほうが予測できない事態にも対応しやすくなりますので、私のおすすめはある程度の利益を法人に残しておくことです。
特に事業を大きくしていきたい場合には利益を出し、お金を手元に残しておくことは必須。
自分のビジョンを税理士に話し、状況に応じて検討するとよいでしょう。
事業を始めたばかりの場合
事業を始めて最初から法人にした場合はなかなか難しいのですが、
- 固定費はどれぐらいかかるのか
- 売上の見込みがどれぐらいあるのか
- 粗利益がどれぐらい見込める事業なのか
などを考えながら決めます。
固定費というのは、家賃とか人件費とか、売上がなかったとしても必ずかかってしまう費用のことを言います。
こちらもある程度の利益が出る見込みで給料を決めておきましょう。
もし「利益が出ないかもしれないし、かなり利益が出る可能性もある」という予測の振れ幅が大きい場合、「事前確定届出給与」という制度をうまく利用することもできます。
この制度の利用方法については『事前確定届出給与とは? 要はボーナス! 制度概要と利用方法まとめ』をご覧ください!
疑問3 株主総会開いてないんだけど……
中小企業(特に「株主=社長」の小さな会社)でよくあるのが
「株主総会ってなに?」
「株主総会の存在は知ってるけど特に何もしていない」
という状況。
でも株主総会というのは、ざっくり言ってしまうと「会社の重要な決定をくだすための会」です。
つまり「株主=社長」であれば、言ってみればあなたのいるところで常に総会が開かれている、といっても過言ではありません。
なので税理士と決算の打ち合わせをして、「じゃあ今年の決算はこれで決まりだね」と話がついた日が株主総会の日、と言うこともできるでしょう。
株主総会の議事録はつくろう!
ただ意思決定はそれでよいとしても、本来その議事録は作っておく必要があります。
議事録というのは、その株主総会で話した内容を記録して、書面に残したもののこと。
「役員報酬 議事録」などで検索すればひながたが出てくるのですが、これもそのうち当サイトでまとめたいと思います!
延長の届出もあるよ
ちなみにこの株主総会、「決算から2カ月以内」としている会社さんも多いのですが、定款で3カ月以内にすることができます。
そして株主総会を3カ月以内にすることで、税務署へ申告する期限を3カ月に延ばすこともできます。
詳しくは『2カ月以内に申告なんてイヤ! そんなあなたに延長の届出!』の記事へ!
疑問4 役員報酬を決めるのは必ず3カ月以内?決算終わったらすぐ変えたい
上の例で「3カ月以内」と書きましたが、「以内」なので3カ月経つ前ならいつでも変えることができます。
例で言うと、
- 1月に変えてもOK
- 2月に変えてもOK
- 3月に変えてもOK
ということですね。
(定款で株主総会を3カ月以内と決めていれば、開くタイミングによっては4月に変えることもできます)
そうすると株主総会の種類が変わったりするのですが、これも別の記事でまとめたいと思います(^_^;)
疑問5 役員報酬は下げてもいいの?
上げる例でご説明しましたが、もちろん下げても大丈夫。
3カ月以内なら上げるのも下げるのも自由に決められる、と覚えておきましょう。
定期同額給与のまとめ
というわけで、役員報酬について、
- 役員報酬を決めるスケジュール
- 役員報酬の5つの疑問
- お金がなくても支払わなくちゃいけないの?
- いくらにしたらいいの?
- 株主総会開いてないんだけど……
- 必ず3カ月以内?決算終わったらすぐ変えたい
- 役員報酬は下げてもいいの?
についてまとめました。
そのほかそこそこ聞かれる疑問として、「どうしても途中で変えることはできないの?」というがあるのですが、これについてはこちらにまとめました!
⇒『役員報酬を途中で変えられるのってどんなとき? タイミング4つをざっくり解説』
いずれにせよしっかりとしたビジョンを持って、会社の状況を踏まえつつ役員報酬を決めていきましょう!
■ 役員報酬の記事一覧
⇒第1回『社長への給料にはルールがあるって知ってる? 役員報酬の払い方2つをざっくり解説!』
⇒第2回『定期同額給与とは? 役員報酬のよくある疑問5つを解説!』
⇒第3回『事前確定届出給与とは? 要はボーナス! 制度概要と利用方法まとめ』
⇒第4回『役員報酬を途中で変えられるのってどんなとき? タイミング4つをざっくり解説』
⇒ 【目次ページ】超入門編のブログ記事一覧
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