サンプルを配ったり、見本を置いたりした場合の税務上の注意点

超入門編

 

昨日『仕入れ(売上原価)を見直そう! 決算書の評価を高めるために』を書いた際、見本品についても言及しました。

この見本品の取り扱いについて、注意すべき点がないか自分でも気になったため、事例ごとに処理をまとめてみます。

 

何に気をつけなければいけないか

商品の一部を見本品として無料で配る場合に、どのような会計処理をするのか。

これを決めるにあたって、

  • 誰に上げたのか

が一番考えなくてはいけない点です。

 

更に「誰に」で分けたあと、場合によっては

  • いくらのものを上げたのか

を考慮していくことになります。

 

具体的に見ていきましょう。

 

 

一般の消費者に配る場合

新製品を知ってもらうために、たとえば食品や、化粧品など、少額の商品(小分けにした商品)を消費者に配ることがあります。

これは、基本的にすぐに費用にできます

使う勘定科目は「見本品費(見本費)」「広告宣伝費」「販売促進費」が比較的多いですね。

 

具体的にいつ費用にできるのか

これはケースごとによって違いますので、分けて見ていきます。

 

原則・その商品を配ったとき

原則はその商品を配ったときです。

何個配ったのか数えておいて、その配った分だけを費用(販売費及び一般管理費)にする、ということですね。

(実際に配った数を数えるというより、配る前の数と、配り終えたあとの数を数えて、その差から計算するのが一般的です)

 

例外・その商品を購入したとき

例外として、その商品を購入したときに費用にすることもできます。

ただこれには条件があって、

  • 毎期だいたい一定の数量を購入していること
  • 継続的に配っていること
  • 購入したときに費用にする処理を継続していること

この3つをすべて満たさなくてはいけません。

 

なので「利益が予想以上に出たから急遽商品を配ることにした」という場合は、たとえ購入が決算までに間に合っていても、配るのが翌期になってしまったら費用にはできませんよ、ということですね。

やはり利益の見込みは早めに出すことが大切です。

 

一応根拠も記載しておきます。

 

(消耗品費等)
2-2-15 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(注) この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

法人税基本通達

 

特定の業者に対してだけいい思いをさせた場合

先ほど「一般の消費者」という書き方をしたように、「消費者の方に特典をつける」のと、「特定の業者に対してだけ特典をつける」のとでは、その費用の取り扱いが変わる場合があります。

わかりやすい例だと、たとえばモニターになってあげたりアンケートに答えてあげたりしたときに、お礼としてクオカードなどがもらえることってありますよね。

あれは一般の消費者の方に対してのお礼であれば、何の問題もなく費用(広告宣伝費等)になるんですが、たとえば化粧品をつくっている会社さんが、

  • 美容院や理容院だけを対象にそういった調査をして、
  • お礼としてクオカードやお金を交付する

ような場合もあります。

そうすると、これは特定の業者に対してだけいい思いをさせているので「交際費」、になってしまいます。

 

まあ今(2016年8月現在)は小規模の会社さんであれば、800万円までの交際費は全額費用になりますので、よっぽど交際費が多額じゃなければ、広告費だろうと交際費だろうと結果はそう変わりません。

しかし今後もこの交際費の制度が続くかはわかりませんので、該当するような会社さんは覚えておきましょう。

 

もっと具体的に知りたい方は、こちらの国税庁タックスアンサーに全体像がのっています。

 

 

 

特約店などに宣伝を兼ねたものを上げた場合

業界の偏りはあると思いますが、たとえばビール会社などが、自社の名前や製品名が入った看板やグラスなどを飲食店に無料(または格安)で上げることがあります。

これって自社の名前が入っていれば、その飲食店に来た人たちの目にとまりますので、これも一つの広告宣伝なんですね。

 

このように宣伝を兼ねたものを上げた場合、値段によって処理が分かれます

金額ごとに分けて見ていきます。

(なお、今回は配った側の話です)

 

金額が20万円以上の場合

これは税法上の繰延資産というものになります。

一旦貸借対照表に資産として計上し、時間をかけて費用にしていく、ということですね。

 

具体的に何年で償却していくのかは、

  • その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)

と、何を上げたかによって変わってきます。

(今でもあるのかわかりませんが、車などもあったというから驚きですね)

 

金額が20万円未満の場合

これは全額を費用にすることができます。

勘定科目は「広告宣伝費」などでよいでしょう。

 

これも根拠を載せておきます。

 

第8章 繰延資産の償却
第1節 繰延資産の意義及び範囲等
(広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用)
8-1-8 令第14条第1項第6号ニ《広告宣伝用資産を贈与した費用》に規定する「製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用」とは、法人がその特約店等に対し自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産(展示用モデルハウスのように見本としての性格を併せ有するものを含む。以下8-1-8において同じ。)を贈与した場合(その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合又はその贈与した資産の改良等に充てるために金銭等を贈与した場合を含む。)又は著しく低い対価で譲渡した場合における当該資産の取得価額又は当該資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額に相当する費用をいう。(昭55年直法2-8「二十八」、平19年課法2-3「十八」、平19年課法2-17「十六」により改正)

法人税基本通達

 

展示場などの見本として置く場合

いままで誰かに上げる場合を中心に見てきましたが、見本の中には展示場に置いていろいろな人に見せることもあると思います。

たとえば機械をつくっている会社さんが、その機械を展示場に置いてデモンストレーションする場合などですね。

これは誰かに上げたわけではないので、基本的には固定資産として計上することになります。

固定資産なので、やはり金額によって処理が分かれることになります。

 

金額が30万円(※)以上の場合

前述のとおり固定資産として計上し、減価償却によって時間をかけて費用にしていくことになります。

事例としてはまさにこの「国税庁の質疑応答事例」が該当しますね。

 

(※)当記事は小さめの規模の会社さまを対象としているため、中小企業者等の少額減価償却資産の特例が使えることを前提としております。

 

金額が30万円未満の場合

固定資産になるということは、金額が30万円未満であれば、全額を費用にすることも可能だろうと考えます。

あとは更に20万円未満であれば、「一括償却資産」という償却資産税がかからない処理のしかたもありますので、会社さんの状況によって判断をするとよいでしょう。

 

 

まとめ

サンプルを配ったり、見本を置いたりした場合の処理として、

  • 一般の消費者に配る場合
  • 特定の業者に対してだけ配った場合
  • 特定の業者に対してだけいい思いをさせた場合
  • 展示場などの見本として置く場合

と、事例によって分けてまとめてみました。

サンプルを配る、見本を置く等して認知を広げるのはマーケティング上有効な戦術でもあります。

効果的に活用していきましょう。

 

 

 

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<あとがき>

・私よくやってしまうのですが、今回特にターゲットが定まっていなかったので非常に反省しております。

・2016.8.11 「特定の業者に対してだけ配った場合」の記述が不正確だったため大幅に修正し、「特定の業者に対してだけいい思いをさせた場合」という目次に変更しました。

 

 

 

 

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