〔図解〕税抜経理と税込経理はどちらが得? 消費税処理の5つのメリットと2つのデメリット

超入門編

 

こんにちは。図解ざっくりめがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

起業して何年で到達するかは人と業種によりますが、

「とうとう売上1,000万円突破!軌道にのってきたぜ」

というときに襲いかかってくる魔物 消費税

 

今回はこの消費税がかかるようになったときに会社が選択できる、

  • 税抜経理(ぜいぬきけいり)
  • 税込経理(ぜいこみけいり)

について、どういうものなのか、どっちを選んだらいいのか、をまとめてみました!

 

 

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〔消費税〕税抜経理とは? 税込経理とは?

 

消費税を納めなくてはいけないことになったとき、まず知らなければいけないこととして、

  • 経理(ぜいぬきけいり)
  • 経理(ぜいこみけいり)

という2種類の経理のやりかたがある、ことを知っておきましょう。

 

 

 

 

税抜経理か税込経理かは会社が自由に決められる!

これは、ある意味そのままなのですが、

  • 税抜経理 ⇒ すべての支払い・入金を消費税抜きにして経理すること
  • 税込経理 ⇒ すべての支払い・入金を消費税込みにして(消費税を含めて)経理すること

というのがその意味するところです。

 

簡単に言うと、税込10,800円のものを買ったら、

  • 税抜経理 ⇒ 本体の10,000円と、消費税の800円を分けて経理
  • 税込経理 ⇒ 消費税込みの10,800円で経理

ということですね。

(もう少し具体的な内容は『〔イラスト図解〕税抜経理と税込経理の処理の違い 消費税の具体的事例』にまとめました!)

 

 

この2つ、

税抜経理か税込経理かは会社が好きに決められる!

ということも覚えておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

税抜経理か税込経理はどっちがいいの? オススメは税抜経理

ただ、

「好きに決めていいって言われても、税抜と税込どっちがいいの?」

という疑問が湧くのは当然だと思いますので、もしそう聞かれたとしたら、私がオススメするのは税抜経理です。

 

それがなぜなのか。税抜経理を基準として、

  • 経営に役立つ数字になる!
  • 期の途中の利益も正確になり、現在の納税額が把握しやすい!
  • ものを買ったとき全額費用にしやすくなる!
  • 交際費もより費用にしやすくなる!
  • 建設業ならあたり前!

という5つのメリットと、

 

  • 手間がかかるし複雑になってしまう
  • 税額控除の金額が減ってしまう

2つのデメリットをまとめていきたいと思います。

 

 

税抜経理のメリット1 経営に役立つ数字になる!

まず個人的になにより大きいと考えているのが、税抜経理だと経営に役立つ数字になる、ということです。

というよりも、税込経理だと経営に役立つ数字ではなくなってしまう、という言い方のほうが正しいのですが。

 

どういうことか、具体的な決算書をもとに見ていきましょう。

 

 

 

↓ サンプルとして、かなり簡略化した決算書を並べてみました。会社の一年間の行動はどちらも同じです。

 

 

↓ 具体的にどこが違うのかというと、このそれぞれ四角で囲った勘定科目の数字が違っているわけですね。

これはあくまでかなり簡略化したものですが、消費税が含まれている支払い・入金のある勘定科目は、税抜経理と税込経理で数字が違ってしまっています

 

 

↓ 消費税は通常この「租税公課」に含まれます。

  • 税抜経理 ⇒ 基本的に消費税は利益に影響を与えない
  • 税込経理 ⇒ 租税公課で費用として処理する(or 雑収入で収益として処理する)

という処理の違いがあるわけですね。

(ここの詳しい話は『〔イラスト図解〕税抜経理と税込経理の処理の違い 消費税の具体的事例』を!)

 

 

↓ この簡略化した決算書の場合、営業利益は変わらないのですが、売上総利益の数字が違います

「どちらが正しいのか?」

と聞かれたら間違いなく税抜経理が正しい数字です。

なぜなら税込経理は消費税の分だけ、売上総利益(粗利益)が高くなってしまっているから。

 

粗利(あらり)は経営判断をするうえで非常に重要な数字です。

ここの数字がそもそも正しくないと、自社が儲かっているのか、より効率よく儲けるにはどうしたらいいか、正確な経営判断ができなくなってしまいます

 

 

でも税込経理のほうがいい数字になってんだからいいんじゃない?

「でも税込経理のほうがいい数字になってんだからいいんじゃない?」

と思ったそこのあなた!

よく見てますね。

でも、こういう場合はどうでしょうか。

 

 

↓ 先ほどの決算書を少し長くしてみました。

 

 

↓ なにが違うのかというと、特別利として約10万円が計上されています。

 

 

↓ 利益を比べてみると、税抜経理と税込経理で利益がものすごくちぐはぐになっていますね。

先ほども言ったように、正しいのは税抜経理の数字です。

 

それなのに、

  • 売上総利益 ⇒ 税込経理が本来の数字よりよくなってる
  • 営業利益 ⇒ 税込経理が本来の数字より悪くなってる
  • 経常利益 ⇒ 税込経理が本来の数字より悪くなってる

税込経理にすることで正しい姿から遠ざかってしまうことになります。

 

しかも『【目次ページ】借入があるなら決算書を見直そう!』シリーズで何度も書いたように、銀行や取引先が決算書を評価する場合「営業利益」と「経常利益」は必ず評価の対象になります。

こんな処理ひとつで本来の姿より悪い評価をされてしまうことがないよう、「あくまで税抜経理が基本の形」と考えましょう!

 

 

 

税抜経理のメリット2 期の途中の利益も正確になり、現在の納税額が把握しやすい!

というのが、私の主張する「税抜経理の一番のメリット」です。

どうせ決算書をつくるなら、経営の役に立てるものにしないと絶対にもったいないです。

 

また、決算のときだけでなく、月次決算などを行うときも税抜経理だと常に正しい損益が把握できます(消費税に関しては)。

税込経理だと上の「租税公課への計上」を行わないと、最終の利益さえ合いませんので正しい姿が全然わからなってしまうんですね。

(毎月この「租税公課への計上」を行えば最終の利益は合いますが、わざわざそんなことをするくらいなら税抜経理にしたほうがよいです。メリット1の問題は解決しませんし)

 

また、税込経理だと「いま現在いくら消費税を払わなくてはいけないのか」を毎回イチから計算してみないとわかりませんが、税抜経理だと「仮受消費税等-仮払消費税等」を計算するだけでいま現在の消費税の金額がわかるようになります

(開発不動産業など、特定の業種だと正確な数字にはなりませんが)

 

こういった「経営上の役に立つこと」が税抜経理のメリットです!

 

 

 

税抜経理のメリット3 ものを買ったとき全額費用にしやすくなる!

次のメリットは、『〔イラスト図解〕税抜経理と税込経理の処理の違い 消費税の具体的事例』でご紹介したものと同じですが、30万円未満のものを一度に全額費用にするときの基準が税抜経理のほうが低くなります

 

たとえば税込302,400円の謎の機械を買った場合。

 

 

↓ 税抜経理でしたら、消費税を抜いた280,000円が本体の金額です。

 

 

↓ これが税込経理ですと、消費税を含めた302,400円が本体の金額になります

 

なので、

  • 税抜経理 ⇒ 30万円未満なので全額を一度に費用にできる!
  • 税込経理 ⇒ 30万円を超えてしまうので減価償却しないとダメ。。

と、税抜経理のほうが全額を一度に費用にできる機会が増えることになるのです!

 

[参考]減価償却については『小学生でもわかるとうれしい減価償却費入門!』へ!

 

 

 

税抜経理のメリット4 交際費もより費用にしやすくなる!

また4つめのメリット「交際費もより費用にしやすくなる」は、固定資産の考え方と同じですね。

この記事を書いている2017年6月現在、交際費は800万円までなら全額費用にすることができます。

(中小企業の場合です)

 

たとえば交際費に税込8,424,000円を使った場合、

  • 税抜経理 ⇒ 消費税を抜くと7,800,000円なので全額を費用にできる!
  • 税込経理 ⇒ 800万円を超えた424,000円は費用にならない。。

と結果が分かれてしまいますので、税抜経理のほうがより費用にしやすくなるわけですね。

 

「こんなに交際費使わないよ!」という会社さんも多いかもしれませんが、交際費の扱いは政権や政策によってふらふら変わりますので、いずれにせよメリットのひとつではあります。

 

 

 

税抜経理のメリット5 建設業ならあたり前!

これは会社さんにとってのメリットではないかもしれませんが、建設業の場合、官公庁に申請書類を出すときは税抜経理のものを求められます

 

知り合いのとある行政書士さんが、

「建設業なのに会計事務所が税込経理をやっていて、こちらで税抜に修正しているけどあっちでやってほしい……」

と嘆いていました。場合によっては税抜経理への修正の手間代が取られていることがあるかもしれませんので、建設業は当然税抜経理にしましょう。

 

 

 

 

税抜経理のデメリット1 手間がかかるし複雑になってしまう

さて、以上が税抜経理のメリットですので、次はデメリットの1つめを。

まず、手間がかかるし複雑になる、ということが言えます。

 

「手間がかかる」というのは、メリット3でご紹介した固定資産の事例のように、すべての取引を本体の金額と消費税を分けないといけないからです。

ただ、いまは会計ソフトを使うことがほとんどだと思いますので、会計ソフトなら設定さえきちんとすれば自動で分けてくれます。非常に楽ですね。

(もしExcelなら分けないといけませんが、よっぽど詳しくないかぎり、消費税かかるような会社さんは会計ソフト使いましょう。。)

 

また、「仮払消費税等」や「仮受消費税等」といった余計な勘定科目が増えますし、考え方的には複雑になります。

  • 実際に支払う金額 ⇒ 消費税を含めた10,800円
  • 費用になる金額  ⇒ 消費税を抜いた10,000円

と、税込経理なら一致するところが分かれてしまうので、社長さんの感覚とずれてしまうことがあります。

 

ただ上にも書いたように、売上・費用になる本来の金額は消費税を除いた金額なのです。

ちょっと大変ではありますが、

  • 資金繰り上は税込金額で
  • 経営上は税抜金額で

と、区別して考える癖をつけるようにしましょう。

 

 

 

税抜経理のデメリット2 特別償却・税額控除の金額が減ってしまう

デメリットの2つめとしては、税抜経理だと、税込経理より特別償却と税額控除の金額が減ってしまう、ということがあります。

 

なお、特別償却については『税額控除と特別償却の違い - どちらが有利なのか(1/2)』を、

税額控除については『税額控除と特別償却の違い - どちらが有利なのか(2/2)』をご参照ください!

 

 

特別償却は減るけど、実は損も得もない

たとえば10,800,000円の機械を買った場合、100%の即時償却ができるとしたら、

  • 税込経理 ⇒ 10,800,000円を一気に費用にできる
  • 税抜経理 ⇒ 消費税を抜いた10,000,000円が一気に費用になる

と、税抜経理だと消費税分だけ特別償却・即時償却の金額が減ってしまいます

 

まあただこれは『〔イラスト図解〕税抜経理と税込経理の処理の違い 消費税の具体的事例』で書いたようにタイミングの問題で、同時に消費税が収益(費用のマイナス)として計上されるので、実質的に大した違いはありません

 

 

税額控除(特別控除)は金額が減ってしまう

これとは違い、税額控除はたしかに金額が減ってしまいます

 

同じく10,800,000円の機械を買った場合、7%の税額控除が受けられるとしたら、

  • 税込経理 ⇒ 10,800,000 × 7% = 756,000円の税額控除が受けられる
  • 税抜経理 ⇒ 10,000,000 × 7% = 700,000円の税額控除が受けられる

と、消費税に税額控除の割合を掛けただけ違いが出てきます。

 

固定資産をよく買うような会社さんの場合は、ここも踏まえたうえで税抜経理か税込経理かを検討するようしましょう。

(私としては1,000万円の機械でも56,000円の違いっていうレベルなので、基本的には税抜経理にすべきだと考えています)

 

 

 

 

 

税抜経理と税込経理はどちらがオトク? まとめ

いかがでしたでしょうか?

消費税がかかるようになった場合に、

  • 税抜経理とは? 税込経理とは?
  • 税抜経理と税込経理はどっちがいいの?
    • 税抜経理のメリット1 経営に役立つ数字になる!
    • 税抜経理のメリット2 期の途中の利益も正確になり、現在の納税額が把握しやすい!
    • 税抜経理のメリット3 ものを買ったとき全額費用にしやすくなる!
    • 税抜経理のメリット4 交際費もより費用にしやすくなる!
    • 税抜経理のメリット5 建設業ならあたり前!
    • 税抜経理のデメリット1 手間がかかるし複雑になってしまう
    • 税抜経理のデメリット2 特別償却・税額控除の金額が減ってしまう

についてまとめてみました。

 

個人的には明らかに数字が変わるので、原則としては税抜経理を選ぶべきだというのが私の考えです。

そのうえで、大きな影響がない・問題がない場合に税込経理を選ぶ、という順序で考えればいいのではと。

顧問税理士が「面倒だから」という理由で税抜経理に対応してくれないのはちょっと問題かなあと私は思っています。

 

税込経理と税抜経理について検索すると、「税抜経理は税金上有利になる」とか「最終的に差はないが」という記事が多かったので、

「いやいやまず経営に役立つかどうかが大事なんじゃないの」

と思ってまとめてみた次第です。

 

とにかく会社の数字は「経営の役に立つか」という考え方から出発するようにしましょう!

 

 

 

 

 

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